虫3

もね  2008-10-02投稿
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「ああ、もう終わる」彼は私の腹に熱い物を落とすと、その体温とは正反対の冷たさで即座に煙草を吸い始めた。私は膝を抱えたまま震えていた。
その時から彼と遊びに行く事はなくなった。ただ体を合わせる為だけに私は札幌へ向かっていた。そのうち彼は私を送るのさえ面倒になり、途中で車を下ろす様になった。知らない街の雨の中、私は数キロの距離を、碁盤の目の様になった道を頼りにホテルまで帰った。
私は上手くいっていなかった親元を離れ、東京で一人暮らしをしながらアルバイトで何とか生計を立てていた。私の生活費を削ったお金は、彼と会う為に使われた。私はただ日々の虚無感を、時々そうやって彼と会う事でやり過ごして生きて来ていた。そうして一年が過ぎた時、彼の大学卒業と同時に私も自分の就職が決まった。私はそれまでとは違った気持ちで彼に会いに札幌に来たのだった。私が就職の事を話すと、既に地元での就職を決めていた彼は興味無さそうに車から外を見ていた。私はその即物的な横顔に構わず言葉をかけた。一番伝えたかった事。彼からの卒業を。「私もう、札幌に来るのは止めようと思うの」彼はそれまでの表情のまま眉を寄せた。



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