「えっと…ここら、辺かな…」
地図を頼りに辿り着いた場所には、廃れた鳥居がぽつんと佇むだけであり、神社らしき物は見当たらない。
「おかしいなー…仲居さん、何か間違えたんじゃ…」
ガサッ
静かな林の中、鳥居の向こうから響いた足音に、私は地図から目を離し音の聞こえた方に目をやった。その私の目に映ったのは時代錯誤な格好をした男性だった。紺の着物を身に付けて足元には同色の鼻緒がついた下駄。時代錯誤な格好の男性は私と目が合うときびすを返し、奥へと走っていってしまった。
「あ、ちょっ…お祭りでもあるのかな…それならあの格好も納得いくし…」
私は勝手な解釈をして、その男性を追い掛ける為傾きかけた鳥居をくぐった。
――と
「え、何、これ――」
辺りの景色が一変した。今の私を取り巻く景色は、私が鳥居の向こうに見ていた景色とは全く違うものだ。ただ、鬱蒼とした森が続いていただけの筈だったのに――。
「何ここ…村?」
今の私の左右には古びた民家が立ち並んでいる。民家には人の暮らしている気配はないが、所々に立つ灯籠には頼りない灯りが揺らめいている。
「それに、何でいきなり真っ暗に…」
いくら木が光を遮ったってこんなに暗くはならないだろう、そのくらいの闇が私を包んでいる。
「とにかく何かおかしい…一端帰ろ――」
帰るべくきびすを返した私の目の前には、今さっき歩いてきた道が忽然となくなっていた。そこには急傾斜でとても登れなさそうな崖がそびえ立っている。
「何なのよ…どういう事…。そうだ、携帯…!」
携帯で助けを呼べばいいんだ、こんな簡単な事に何で気づかなかったんだろう。私はショートパンツのポケットから白く小さな通信機器を取り出して、ぱかりと開く。隠れオタクな私の待ち受け、美少女キャラのイラストと目が合い少し落ち着きを取り戻した。
――が
「どんだけ田舎なのよーっ…!」
開いた携帯の左上には赤い文字で「圏外」の表示が。
落胆と僅かな恐怖感から、私は思わずぺたりと座り込んだ。
自分の迷い込んだ状況がしばらく把握出来ずに、恐怖に飲まれ込んでいく感覚をただ味わっていた
三ノ舞へ ツヅく