『あのねっ…深奈ちゃん聞いて…。』
ぐしぐしと泣きながら可愛い顔でそんなことを言われては、同性であっても惚れてしまいそうだ。
『ん、聞くからさ…どうしたの?』
こういった悩み事を聞くのは私の役目だ。沙季は口より先に手が出るタイプで、慎重なものを必要とすることには向かない。よって、どうしてもこういったことは私が引き受ける形になる。
嫌ではないから構わないのだが、責任重大だ。
『うん…。蒼汰がね、最近会ってくれないの…。お互い受験で忙しいのはわかるけど、少しくらい会いたいよ…。』
またうるうると瞳に涙をためた愛をみて、沙季の表情がみるみる変わっていく。
『沙季…?』
『あのさ、蒼汰今どこにいる?』
にこやかな笑顔が怖かった。こうなっては誰も沙季に逆らえない。
『ちょっと説教しに行ってきますね。愛、行こ?』
沙季の後ろをちょっとびびりつつ、愛がとことことついていく。
残された3人はあっという間の出来事に呆然とするしかなかった。
まぁ、今回は行動するのが一番だろうから沙季に任せるが、多少の不安は拭い去れない。
とりあえず、蒼汰の無事を祈ろう。