家に戻る道を歩きながら、セイルはライルの方を見て、心配そうに言った。
「…ああ、仕留め損ねたがな。ただ、分からんのが、奴はどうして砦までの道を待ち伏せ出来たのか、という事だ」
「…っ!」
セイルはその言葉に思わず息を呑んだ。
「誰かが奴に連絡した、としか思えんだろう?」
ライルはジロリとセイルを睨みながら、吐き捨てるようにして、言った。
「まさか…いや、そんな事は…」
「で、でもお義兄さん、町と砦はかなり離れてますし、連絡したくても出来ないんじゃないですか?」
サリアは慌ててライルとセイルの会話に入って行き、ライルの懸念を否定した。「サリアさん。我々魔法剣ソードメーカーには、遠くに離れていても一瞬で会話のやり取りができる『メイル』という魔法があるのです。貴方もご存知でしょう?」
「…はい…」
サリアはそう言われ、沈んだ表情でうつ向いてしまった。
「…兄さんは、娘達の誰かが兄さんの行動を伝えたと考えているのか?」
「…ああ」
「…っ」
セイルはギュッと唇を噛んで、拳を震わせた。
「ただ、会話の内容は『伯父を殺せ』では無かったと考えている。恐らくは『あなたはそこから逃げて』という内容だったのだろう」