「いらっしゃい」
と魚屋のおじさんが元気に叫ぶ港街の通り。お昼時もあってか人で賑わっていた
深々とフードを被ったどこにでもいそうな旅人。そんな男がその通りを歩くどこにでもある光景
そんな日常の中にあるふとした出会い。それはたった
30秒間の出来事だった
少女「ごめんなさい」
と言いながら人をかき分けて走る少女。ふんわりした金髪をなびかせ進んで行く
だがこの人混みを全てかわせるほど少女の運動神経は良くないらしい。石造りの道路のちょっとした段差に足を引っ掛けてしまう
少女の前には顔1つ分背の高いフードを被った男が少女の肩を掴み支えていた
少女「あっ…ご、ごめんなさい」
頬を赤らめながら咄嗟に謝る少女。反射的に相手の顔を見てしまう
瞬間、少女の背筋がびくっとする。頬にひんやりとした手の感触があったからだ
男の方も何か違和感を感じているようだった。男の口が開きかけた瞬間…
少女「い、急いでますので!」
少女は軽く頭を下げて、男の進行方向とは逆の方向に走っていく
男「まさかな…奴が反応したのか?」
男は呟き、やはり少女とは逆方向に歩いていった
…