『人生ゲームの盤の上なら一体あたし、どんなマス目に今止まってんのかなぁ』
白い見慣れない天井を見つめ、伶はつぶやいていた。
女40年も生きていたら、それなりの人生の粋も甘いも経験してきていて不思議はない。
ただちょっと、伶は人並みよりは波瀾万丈だったに違いない。
子供が居て旦那が居て。
そんな極普通の生活を彼女は放棄してまで自分に正直に生きる道を選んだ。
その結果、今、彼女は無機質な白い天井の部屋に寝ている。
「ティララァ〜♪♪♪♪〜」
携帯が鳴った。
いつものメロディ。
彼からのメールだ。
《元気ぃ(^0^)/》
彼が気を使ったり心配したりの時によく使う言葉だ。あたしには、彼の想いとは逆なその軽い言葉に救われてきた事が多い。
普通ならきっと、
(大丈夫?)とか(なんて言っていいか‥)とか(どうしてこんな‥)とか、当の本人が最も聞きたくない社交辞令的でいて攻撃にも似た言葉を言うに決まってる。
彼はあたしの今の状況の直接の原因となってるにもかかわらず‘あの’言葉だ。まるで、そうなる前と何も変わらないよと言わんばかりに。
〈彼女は仕事?〉
とりあえず返信した。
「ティララァ〜♪♪♪♪〜」‥