左手首の傷がまだ消えない頃、伶は家を出た。
なおと彼女の順調なお付き合いを、側で見ていられる心を、持ち合わせては居なかったから。
なおに対しての‘怒り’みたいなモノは不思議とほとんど無かった。
『あたしもうここに居ちゃダメなんだよね?あたしと別れるからって告白したんでしょ?』
伶の覚悟になおは
「う〜ん‥ずっとはマズイけどまだここに居たらいいじゃん!」
そう答えた。
なおは
「伶を嫌いになった訳じゃないし変わらず好きでいるんだから」と。
まるで一夫多妻の国みたいに。
これ以上の心臓をわしづかみにされるような痛み苦しみから逃れられたら、と伶自信なおと離れたくない想いを殺しながら、取りあえずの荷物だけ持ち家を出た。
実家が遠いため仕事も辞めた。まぁ、行ける状態でもなかったし。
旦那も仕事もそして居場所を失くした瞬間だった。
いや、スベテをだった。
自分の中で何度も何度も自分を殺した。
何故かなおとの絆は切れそうにないと感じてたし。
ただ、離れてるって、想像以上の淋しさと辛さだった。伶は憔悴していた。
『仕事探さなきゃ』
伶は迷い悩んでいた。