あの日から二週間―\r
相変わらず、気不味い空気が二人を包んでいた。親友の茉莉子や、麗華とも、距離を感じていた。あと、一週間程で、夏休みになろうとしていた。その前に、淳には言わなければいけない事が有った。
「あっちゃん・・・、話しておきたい事が有るの。」
放課後に、淳を誰も居ない教室に呼び出した。
「話って・・・?この後、バイト有るから、あんま時間無いんだけど。」
私と日帰り旅行に行く為に一生懸命にバイトをしている淳に、何て言うんだろう?自分自身に問いかけていた。
「あっちゃん、私・・・。」
「日帰り旅行、行けなくなったとか、今更言うの、無しにしてくれよ〜、俺、一生懸命、その為にバイトしてんだからさ。」
淳の言葉が、胸に突き刺さった―\r
「あのね・・・。」
淳は、私の気持ちの変化に気が付いていた。
「うん。」
「あっちゃんと日帰り旅行には行けない・・・。」
淳の表情は、みるみる固まった。
「何で?」
「あっちゃんと・・・、もう付き合えない。」
「香里の言ってる意味が、分かんないんだけど・・・。」
「ゴメン・・・。」
「他に好きな奴でも出来たのか?理由無しに、納得出来っかよ!!」
理由―\r
確かに、淳が言う話は、正論だった。一年付き合って来て、旅行の話までしておいて、ある日、急に別れてくれなんて・・・、私でも、理由無しには納得出来る筈が無かった。とっさに、嘘を付く事しか、考えられ無かった。
「・・・、他に好きな人が出来たの・・・。」
勝手に、私の口を突いて出た言葉だった。有り得ない嘘だった。
「どこの、どいつか教えてくれ!!」
淳は、感情的に言った。その場凌ぎで付いた、適当な嘘は、続かなかった。
「あっちゃんの、知らない人・・・。」
「そっか・・・。解ったよ。」
淳は、黒板消しを思いっきり床に投げ付け、教室を出て行った―\r
また、涙が止まらなかった。私が、別れたいが訳無い―\r
「解ってよ・・・。」
淳が教室を出て行ってから、小さく呟いた。本当は、全部あの日の事を話したかった。言えれば、きっと楽になれた。淳の事を、本当に愛していたから、言えなかった。
高校二年生の夏―\r
私の初恋は、不可抗力に終わりを告げた―\r