「いいか、まずはアンタが奴隷として潜入する。ここまでは俺もいるから、何も心配要らない。
…ちょ、ホントに大丈夫だって!
ここからが肝心だ。
アンタは夜中にこっそり脱け出し、三階の、この奥の部屋に行ってくれ。ここに金庫がある。」
「金庫なんかどーやって開けンだよ?大体どーやって脱け出せって?」
「金庫はダイヤル式で、番号は1840382。イヤよお触りと覚えてくれ。
心配無い、警備の中に仲間がいる。これを投げれば、そいつにはアンタが仲間だってわかるハズだ」
俺は昼間、飯屋でタックにそう説明した。
何せ、頭の中がポジティブに自分でいっぱいな奴だから、出来るだけ簡単に、要点を絞って教えた積もりだ。
それでも理解したかどうか、甚だ疑わしい。彼女の華奢な躰に潜む凶悪な力のカラクリは、脳味噌が筋肉に侵蝕されているとしか思えない。
頭悪い発想だけど、マジで。
それでも計画が上手く行くには、彼女が必要不可欠だ。
俺一人では警備を破れない。
そろそろ時間だ。俺は目の前の悪趣味な屋敷を見上げた。
ドンッ!
爆発音が響いた。
「あのヤロー…」
タックは相棒に言われた通りに、渡されたペンダントを紐から引き千切り、食事などを入れる小窓から廊下へ投げた。
それが仲間に見つけられるのをドアに耳を近づけて待っていたら、いきなりドアが爆発した。
幸い、人間止めてしまえ、と言うくらい頑丈な彼女は、額に軽い怪我をするだけで済んだが。
「何っっってモン首に掛させやがるんだ!!」
人生に於いて、必ずやり遂げたい事を見つけた瞬間だった。
「コロス!ぜってーコロス!!」