ドン詰まりだっ…!
タックは、自分の陥った絶望的な状況に戦慄を覚えた。
そんなむつかしい言葉は知らなかったが、とにかく覚えた!
仮染めの相棒。
そいつは言った。
「金庫は3階奥の部屋にある」
「もし見つかっても、奴らは皆素人同然、銃も旧式だ。まずアンタの敵じゃない」
その言葉を信じて、結果、自分は今、3階奥の物置でドンパチをやらかす羽目になっている。
もちろん金庫なんか何処にも無い。
金目の物もあると言えばあるが、あさっている間に鉛で腹一杯、つまり蜂の巣かになるか、運が良くてシルバーの刺激的なブレスレットを填められるかだ。
ペンダントが爆弾だった時点で彼女は気付くべきだった。
自分の組んだ相手が、全く信用出来ないと言う事に。
この計画が、彼女の安全を全く保証していないと言う事に。
警備員が次々押し寄せて来る。
彼らはプロで、銃は精度に定評あるアルコ社製。
「帰りてぇっ…」
切ない響きは銃声に掻き消される。
一発の弾丸が、彼女の腕を霞め、緋色の一文字を描いた。
その時。
彼女の目の色が変わった。
既にボロボロのドレスの裾を思い切り破り、スラリとした太股を露にする。
次いで豊満な胸元を掴み、引き裂く。中からのぞく谷間、ではなくパット、そのパットの中からさらに、ナックルが出てきた。
ナックルをはめ、タックは吠えた。
「っっっっっっっめぇら、金〇〇〇〇〇〇すぞ、コルァ!!!!」(〇〇による修正が少し遅れたことを深く御詫びします。)
そこからは、まるで獣だった。
警備員達は狙いをつけるが、引き金を引く時、彼女はもうそこにいない。
タックは遮蔽物の間を縫う様にして彼らに近づき、容赦無く弱点を、――潰す。
その動きは尋常なものでない。
大の男達が、小柄な彼女によってみるみる血だるまになって行く。返り血で赤く染まって行く彼女を、美少女だと思う人間はもういない。
「モ、モンスター…」
眼前に転がる仲間達の有り様に、後から駆け付けた警備員は彼女をそう呼んだ。
かなりいい発音で。