次の日
コタロウとナオは教室前の廊下で何やらこそこそと話をしている。
話題はもちろんツチノコ。
「なぁコタロウ、あのツチノコ、お前はどうすべきか分かってるよな?」
兵庫県のある町の話は有名だ。
ツチノコを生け捕りにすれば二億円、本当に貰えるのかは疑わしいがそれを利用して町おこしをしている。
それだけ大々的に宣伝していれば賞金をあげないわけにはいかないだろう。
「お前、俺に教えてくれたってことはさ…つまり、そういうことなんだよな?」
たぶん賞金の山分けの話だろう。今さらだが正直ナオにツチノコを見せたことを後悔した。
「まぁでもいっか。一人一億ずつ、高校生の小遣いにしては十分過ぎるくらいだしな」
「い、一億もくれんのか!?今度からお前のこと『様』付けで呼ぶしかないな…うん」
高校生でなくても十分過ぎるだろうその金額。一億ずつと言って再び後悔したコタロウだった。
あんなに嬉しそうなナオを見てしまったら前言撤回というわけにもいかなかった。
「ねぇねぇ、ツチノコがどうしたの」
突然の問いに体をビクつかせ二人は振り返る。
不覚だった…ツチノコの話に夢中で後ろから近づく小さな影に気がつかなかったようだ。
「な、何でもねぇよ!子供はあっち行ってなさい!シッシッ!」
一番厄介な奴に話を聞かれてしまった…。
阿川優希(アガワ ユウキ)、ガキっぽい女。少女と言うより少年と言ったほうがしっくりくる。そんな感じの女だ。
ユウキの子供っぽいショートカットがさらに幼さを引き立たせている。
「ねぇツチノコ捕まえたんでしょ?その子どうするの?」
こんな奴にバレたら大変だ。
「お前には関係ないだろ…アメちゃんあげるからあっち行けって…!」
ナオはいつもポケットにしまってあるレモン味のアメをちらつかせた。
ユウキは嬉しそうにそれを受け取ると教室に入っていく。
それを見てホッとしたのも束の間、早速ユウキがやらかした。
「コタロウがね!」
その続きを言う前に床にねじ伏せたが…マジでこいつは心臓に悪い。冷や汗もビッチョビチョだ。