元気に言い放った彼の目はいつか見たように潤んでいた。
ウィルとメレディスにはすぐにわかった。ハリソン警部は悲しいに違いない。犯人を逃がしてしまった悔しさ、病院の人々を一人も助けられなかった腑甲斐なさ、それらが彼をたまらない思いにさせているに違いない、と。
さっきまで騒いでいた二人はピタリと静かになってしまった。
「・・・警部・・・。すみません。俺・・・」
なんとなく、ウィルは謝ってしまった。それにつられメレディスはうつむいた。「なんだ二人とも!犯人は死体が見つかったし、ウィルは無事に帰ってきた!喜ぶべきだ!さあ!さっきみたいに笑ってくれ!」
ハリソン警部が無理をしているのは見え見えだった。「警部・・・・!俺は、逃げようとしてました・・・・・!」
「・・・。」
「病院にいる人達はみんな、死んでしまった。でも俺は、その現実から逃げようとしてました。メレディスと話して、笑って、幸せだと思いました。この幸せに一生浸っていたい、とまで。でも、この現実をちゃんと見据えて俺は、俺たちは、笑ってちゃいけないって、死んだ人達のためにも、逃げてたらいけないって、今の警部を見て、そう思いました。」