「な、なるほどって何が?」目を白黒させながらランスォールがシーラに訊いた。「青春ね。彼の。」
リリーラの側から離れたレンデルがこちらへやって来る。
角を曲がるとき、隠れていた四人と出くわす。
「あ…。…………。」
一瞬何か言いかけて、また避けるようにすれ違って行った。
「…なんなんだ?アイツ。」去っていく彼の背から今度は取り残されたリリーラの方に目を向ける。
あれから微塵も動いていないリリーラの背は泣いているのか、少し震えている。ランスォールは服の裾が引っ張られているのに気付き横を見ると『行きましょう』と雪が見ていた。
レンデルはまだ船を出ていなかったらしく、甲板で蹲っていた。
「あ。船を占拠してた犯人見ーっけ。」
レンデルが振り向く。
「偉く棒読みだな。
あんたら誰だ?何の用だ?」
「いやーね、クラーンに行きたいんだけどアンタに船乗っ取られて困ってんだよね。」
ランスォールが言うとレンデルは乾いた声で小さく笑うと『悪いな』と言った。「悪いと思ってるなら訳ぐらい聞かせて欲しいね。」 レンデルはまた乾いた声で小さく笑った。
よっこらせ、と立ち上がるレンデル。
海から吹く風が彼の髪をさらさらと撫でた。