摩天楼 その19

river  2008-10-12投稿
閲覧数[360] 良い投票[0] 悪い投票[0]

曇っているせいか、月は見えない。向こうには街の灯りが点々と見えるのみ。

リリィがみんなの方を向いて挨拶しようとした時だ。目の前にひとつ影が立ちはだかった。

マーチだった。マーチはリリィをわざと無視して酒場の中に入って行った。

喉に何か詰まっているように苦しい。皆の方に目を向けた。
「今までいろいろとありがとう」
客達の視線は寡黙なマーチからリリィの方に再び移る。リリィはマーチが視界に入るのを避けたかった。
「さよなら」
そう言って足早に酒場を立ち去る。
「リリィ?」
ココはリリィに声を掛けたが遅かった。真っ暗な闇に消えてしまっていた。
空が唸る。
じきに激しい雨が降ってきた。
心配そうに立ち尽くす人々の後ろでマーチだけは知らん顔。
ラジオから流れる。
明日、カナイ市長がメライ地区を訪問するだとか…
いや、訪問なんて生易しいものではない。警察官も引き連れて大捜索といったところだ。

「どうするつもりだよ王子様」
ヒオは溜め息をついて呟いた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 river 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ