先生は少し意外そうな顔をしてこう言った。「どうした、楠木?」そして優しく微笑んだ。私は躊躇うことなく先生の噂について聞いてみた。「先生には大切な人・・いますか?」すると先生は間をおいて話始めた。「あぁ、いるよ」迷いのない真っ直ぐな目。それだけで、どれだけ先生が大切に思っているかが伝わってくる。敵わないと思った。大切な人にだけではなく、先生の気持ちにも・・・。「今日で学校を辞めるよ」何気なく言ったその言葉に、私の心臓は激しく動いた。辞める・・?「もともとそういう約束で入れて貰ったんだ」何も言えずにただ先生を見つめている私に、先生は悲しく微笑んで「ごめんな」と呟いた。