より激しさを増した雨がリリィに打ち付ける。
制服はびしょ濡れになった。暗い空から幾筋の稲妻が走る。
リリィは雷に撃たれてしまいたかった。
バッグを取りに廃車置き場に向かう途中、こんなことを思ったにも関わらずリリィは雷に度々怯んだ。
すぐ出て行ってしまえばよかった
そうすればこんなことには。
どうして一番届いて欲しい人の耳には届かないの
ピアニストの居なくなった酒場は徐々に賑やかさを取り戻す。
ただ、強い雨と稲光が心配を膨らませた。ヒオは時々マーチの方に目をやる。大体いつもヒオの傍に座るマーチが、今日は一人隅の席でぼんやりしている。そわそわする素振りを見せない。
しかしどういうことか、雷が酷くなるのを気にしていたら、いつの間にかマーチの姿は消えていた。
「あれ、いないや」
「あいつ病んでるな」