雨はなおも降り続けている。生まれた嫌悪感はリリィを憂鬱にさせた。水を吸って制服が肌にまとわりついて気持悪い。
まだ濡れているが、長居してはならないと思い、バッグを持って外に出ようとした。
「待ってよ」
マーチは咄嗟にリリィの手を掴んだ。リリィは手を振りほどこうとしたが、彼の引っ張る力に勝てなかった。こんな華奢な腕なのに。
「ほかに…何か?」
泣きそうな声で睨んだ。
「ほんとは…さ…」
マーチの声は震えているように聴こえる。掴んだ手を緩める。マーチの手は冷たい。睨むのをやめた。
彼は頭を抱えてそのまま口をつぐんでしまった。リリィは待った。
「…もっときみのことが知りたかった」
空は相変わらず唸り、雨が廃車を撃つ。とめどなく雨水が伝う。リリィは苦しむマーチの近くに寄って冷たい手に自分の手を添えた。