「それ、どういう意味だ?」
「…えぇと…その…、逃がしてあげよ…あの子」
なんとなく予想はしていた。
小学校時代の話だが未だに覚えている。ユウキとは関わりがなかったが小学、中学と同じ学校に通っていたコタロウはある事件のことを思い出していた。
小学四年のときの動物脱走事件。
飼育小屋の鍵を開け全ての動物を逃がした犯人は今目の前にいるユウキ本人だった。逃がした理由は、『かわいそう』だったから。ただそれだけの理由だった
動物を大事に思う気持ちは分かるがその異常な行動がまずかった。それからというもの陰湿ないじめが中学の終わりまで続いた。
「…お前バカか!?二億円捨てろって言ってんの!?」
ユウキの過去を知っていてもナオの言い分も分からないでもなかった。
「…売ったらこの子…見せ物にされるんだよ!?それでもいいの!?」
「いやぜんぜんいいけど?二億だぞ二億!アホかお前?ツチノコの運命なんてどうだっていいんだよ!」
サラッと悪役のセリフを吐き捨てるナオだが、正直コタロウも二億を手に入れたかった。
「やだやだやだ!絶対やだ!絶対渡さない!」
ユウキはついに泣き出してしまった。
駄々をこねる子供のように鼻水をたらしながらだ。普通の女の子なら見たくないものだがユウキだとしっくりくる鼻水顔だった。
「コタロぉ〜、コタロウも止めてよぉ…お願いだから売らないでよ…」
「ちょ…きたねぇよ!鼻水がつくだろ!」
鼻水顔を押し付けてくるユウキを必死に押し返した。それと同じくらいユウキの顔も必死だった。
その日はあまりに荒れてしまったため2人をなだめるだけで精一杯。
とりあえず1日考えよう。そう言ってなんとか2人を納得させたのだった。