祭りも終盤、人が増えてきた。人混みは苦手だ。
「少し歩ける?」
彼が何気なく言った。
「うん、大丈夫」
私は行き先は聞かず彼についていった。
祭りからでようと門にさしかかると理沙と亮太に会った。理沙が手を振り
「もう帰るの?」
と、声をかけてきた。
「まぁ…」
「そっかぁ〜残念だね。彼氏さん?」
私は一瞬彼の方を向いてうなづいた。
「邪魔するなよ、理沙」
亮太がちょっと不機嫌そうに理沙に言うと理沙は舌を出して
「バイバイ」
と告げた。私も手を振り
「バイバイ」
と告げた。亮太がまっすぐ私を見る。その視線が痛かった。動けないでいると
「行こう」
彼が手をひいてくれた。
彼は何も聞かない。
でもきっと私が動揺していたのを彼はわかったはず。
「さっきの女の子、部活が一緒なの。彼氏とも学校公認みたいに仲良しで…」
私は不安な気持ちを隠そうとどんどんおしゃべりになる。彼は黙っていた。
私の不安は高まるばかり。
「どこにいくの?」
もう祭りからでて山に近づいていた。
「もう少しだよ」
ついた先は小さい神社。
それは見覚えがあった。
「ここは…」
「覚えてるか?」
「うん…」
小さい時に二人でよくきた場所だった。懐かしい。