勢い良く正門を抜けると、そこには幅の広い道路が横に走っていた。
辺りを見回す。しかし、咲坂の姿は無い。
龍一は時計を見た。約束の時間まで、もう一分を切っていた。
(まだか・・・?)
もう一度辺りを見回すが、咲坂はおろか、人っ子一人見つからず、辺りはシーンとしていた。
(もう来ててもおかしくないはず・・・)
そう思いながら、また時計を見る。
10時まであと7秒、6、5、4、3、2、1・・・
バヒュウンッ!!
突如、道路の左が光ったかと思うと、光の中からバイクとともに咲坂が物凄いスピードで現れた。
キキィィィ!!
バイクをフルブレーキで横倒しにしながら、咲坂はちょうど龍一の目の前に止まった。
「遅れず来たようだな。」咲坂はサングラスをはずしながらバイクを降り、龍一に言った。
一方、龍一は口をあんぐりと開け、呆然としている。「・・・おい。」
咲坂は、もう一度龍一に呼び掛けた。
「・・・あ、ああ。ちょっと面食らったもんで・・・。」
当然だった。
咲坂は少し考えるような表情をして龍一に聞いた。
「・・・覚悟はできているな?」
龍一は、ゆるんだ顔を引き締めた。
「ああ、できてる。」
強く答えた龍一を、咲坂はじっと見つめた。
首から下げた右腕のギプス、帽子からはみだした包帯、そしてなぜか顔にはま新しいアザ・・・
『痛々しい』としか言いようの無いその姿。
しかし、それとは裏腹に強く、たくましい決意のこもった目を、その男は持っていた。
「いいだろう・・・お前を連れていってやる。『ホーム』へ。」
咲坂は、龍一の目を見ながら、はっきりと答えた。