男たちは黙って青年の話を聞いている。その人数は果てしなく、今いる廃墟の建物の中がむし暑くなるくらいだ。
「僕たちはあの事件で、たくさんの愛する人を失い、たくさんの家族を失った。そしてこの体も・・・!」青年は自分の胸に手を当て服を握り締めた。
「警察なんてあてにならない!!被害を簡単に伝染病によるものと決め付け、勝手に“ロザントン伝染病事件”などとほざいてる!挙げ句のはてには、ノイザーの俺たちを危険人物とみなし、手当たり次第逮捕している!」
そうだそうだ!と周りから叫ぶ声が聞こえる。
「誰かが何かをしようとしてる。あの事件には重大な黒幕がいる・・・!伝染病なんかじゃない!確かに聴いたんだ。耳障りなノイズを・・・・!きっとそれを街で放送したやつが犯人だ!そいつを僕たちが見つけだし、・・・・・」
青年は唾を飲んだ。
そして大きく息を吸って叫んだ。
「ぶっっ潰す!!!」
古びた廃墟にその声は響き渡った。
「おおーーーーーーっ!」大歓声がさらに廃墟に響いた。周りの男たちがこぶしを突き上げ、吠えたのだ。青年はびっくりして耳をふさぐ。
一人の青年の演説会のようなものは、ひとまず幕をおろした。