「パインちゃん?パインちゃんなのね?!」
「パインちゃん、帰ってきたんですか」
メイドのルイもエプロンで手を拭きながら飛び出してくる。
手足が泥でグチョグチョの愛犬パイン。
大きな玄関ホール。一匹のポメラニアン犬がハアハアと荒い息。
”パインちゃん”との再会を果たすカナ婦人。
「全く、どこまで行ってたのかしら、こんなになって!」
いうなり、婦人はパインちゃんにレロレロとキスをした。
ずっと待っていたのだ。よほど嬉しいらしくいつもより長い。
(うわ、気持ち悪っ)
毎度の事ながら、ルリには耐えられない。目を閉じて時が過ぎるのを待つ。
パインは、目がクリクリしていて愛くるしい。
梅雨時の夕方とはいえ、何故こんなにパインは泥を被って濡れているのか。
「さあ、パインちゃん、お風呂に入りましょうネ〜」
婦人のパインに注ぐ視線は優しい。
「なにぐずぐずしてるの、お風呂の準備は出来てるんでしょうね」
ルイに冷たく言い放つ婦人。
「は、はい。すぐに」
(いない3日間はそれなりに平和だったのに…また人を奴隷扱いする気でいるわ)
「ルイ、なにブツブツいってんの?さっさとしなさい。パインちゃんが風邪引いちゃうでしょ」
バスルームへ走るルイ。