――ここはどこですか。
――わたしは誰ですか。
夢の中の男は、いつもわたしを睨みつけてこう言った。
「お前は誰だ。なぜここにいる。」
……知らないよ。
気づいたら生まれてて。
気づいたら大人になってた。
子供を生きるのに精一杯だったあの頃の方が、よっぽどまともに「生きて」たのかな?
わたしは誰で、どこから来たかなんて、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎる問いで。
余裕で答えられたはずなのに。
わたしは誰だろう?
どこから来たのだろう?
どこへ行くのだろう?
今になって急にわからなくなって、夜何時間だって起きて考えてる。
わたしは誰ですか?
どこから来たのですか?
どこへ行くのですか?
誰か、先を歩いてくれたら、わかりやすいのに……。
いつもいつも、馬鹿げた問題だけが、わたしの前に立ち塞がる。
「そんなことどうでもいいから、早く、他にやることあるんでしょう?」
わたしの人生より時計の方が尊重される世界。
どうすりゃいいってのさ?
だって、この問いに答えを出さなきゃ、どうあったって前には進めないのに。
わたしは誰で、どこから来て、どこへ行くのか。
どうでもよくないよ。
命って何さ。
大事なことって何さ。
人間らしいって何さ。
美しいって何さ。
変わってゆくって何さ。
誰か教えて。
なぜわたしたちはこの世界に産み落とされ、愛を育み、何も持たずに消えるのか。
ねえ、誰か、教えて。