後日談。
俺達は逃げていた。
放火及び暴行容疑の、指名手配犯として。
「でもボヤで済んだんだから、貼り紙までして捜す事ないのにね」放火の犯人、チェルシーが言う。
「やっぱり金庫の中身盗ったからか?
裏金だから、大っぴらに盗られたって言えねーだろうけど」
ガメた金を6割持っていった、タックが言う。因みにチェルシーが3割、後が俺。
「いや、フツーに、警備員ヤりすぎたからだろ…」
俺はため息混じりに言う。
新聞には、実業家Aさんの邸宅の別館に侵入した不審者を捕まえようとした警備員と応援に駆け付けた警察官のうち、56人が重軽傷を負った、と出ていた。
俺が出会った警備員、又は警察官は精々10人程度だ。
しかも、俺はそいつらを倒した覚えはない。
何だかな。
俺が巻き込んだ事なんだが、結果を見れば、俺、巻き込まれてないか?
今更言っても仕方ない、か。後悔先に立たずってヤツだ。
「これからどうする?」
俺は二人に問いかけた。
「そうね、まずはお墓参りかしら。色々言ってやりたい事もあるし」
チェルシーは、遠い故郷の方へ顔を向ける。その横顔に、改めてイイ女だな、と思った。
「テメェに関係ねぇだろ!ストーカーか?」
タックは俺にメンチ切ってきた。
改めてどうしようもないヤツだな。
「それで、アナタはどうするの?」
チェルシーが俺に問いかける。
俺の手元には、金庫から盗った金の一割と、タックを売った時の金。
「まぁ暫く、自由にやるさ」
俺は自分の連絡先をチェルシーに教え、二人を見送った。
さらに後日談。
「何で…」
俺は警察官に取り囲まれていた。
「放火及び暴行容疑で逮捕する!家宅侵入罪もだ!」
「何でここが!?さてはアノ女…!」
チェルシーは、やっと故郷の土を踏んだ。
「ごめんなさいね、自由になる為には仕方なかったの」
そして彼女は、素敵に微笑む。
俺は、警察署へ連行された。
「あっ!」
「うげっ!」
その廊下には、手錠をかけられたタックの姿が。
「何で…」
「知り合いか?その娘無銭飲食で捕まったんだ」
……何で?
俺達は、二人並んで気まずい思いをしながら、各各の取り調べの順番を待った。