昔、友達が『部屋』にたどり着いたが、その中にいた男と2言3言、言葉を交わしただけで出てきたと言っていた。
「あそこは寒すぎる」
…その話を聞いてから約2年。オレはその部屋のドアらしき物の前に立っていた。ノックはせずドアを開ける。ドアはすんなり開いた。中には男が1人椅子に座っていた。
「やあ」男が言った。
オレは何も言わずに煙草をくわえた。
「寒くないかい」男も煙草をくえた。
「いいや」オレは火をつけた。「全然寒くないかいね。あいつには寒かったかもしれないがオレには全然寒くない」
「ならいいんだ」男も煙草に火をつけた。「ところで、君はここに何をしにきたんだい」
「さあ」本当にわからなかった。
「もしよかったら」男が口を開いた。「私の代わりにこの椅子に座ってくれないか」
「かまわないよ」オレは言った。
男は椅子から立ち上がり部屋から出ていった。
そんなわけで、今オレは部屋の中の椅子に座って誰かが来るのを待っている。