連二郎の腕はさらに強く紅を抱きしめる。
「だって妙は?」
連二郎は小さくため息を付き紅の口を口でふさいだ。
連二郎の舌が紅の舌に絡みつく。やがて、息を止めたままの紅に連二郎は気付き口を離す。
「すまねぇ。もう少し優しくしたいんだが押さえが利かねぇ」
紅は連二郎の胸に顔を埋める様にもたれかかる。顔が紅潮し潤んだ瞳は一層香り立つ華そのものだ。
「そんな顔した女連れて歩いたら吉原中の男が集まっちまう」
連二郎は羽織りの前を開き、紅を包むように懐の中に入れた。
「妙、妙ってさっきから何を疑ってんだ?」
連二郎が懐に隠した紅に話しかける。
「だって簪が離れに落ちてて、下駄の音だって…」
「それは…。口止めされてるから聞きたかったら妙に直に聞いてくれ」
連二郎は辺りをうかがい、人が来ない事を確認し再び紅の口を口でふさいだ。
紅は二度目のくちづけに頭がクラクラして何も考える事が出来ず、ただ連二郎に身をまかせた。
「駄目だ、すまねぇ。もうそんな目で見られたら…」
連二郎は荒い息を吐きながらかろうじて残っていた理性で紅を離した。
紅はガクガクと震え膝から崩れそうになりしゃがみ込んだ。
連二郎がそっと手を差し延べる。紅はこれまでに見せたことのない笑顔でその手を掴んだ。
紅華楼に戻って紅の変化に皆が気がついた。蕾が大輪の華を咲かせたかの様に艶やかに香り立ち見るもの全てを魅了した。
「紅お嬢様?何かあったんですか?」
着替えを手伝いながら妙が聞いた。
「私の方が聞きたいわ。何で離れにいったの?妙 ?」
離れと聞いて妙の顔が赤くなる。が、真剣な目で自分を見つめる紅に嘘はつけなかった。
「実は…」と妙は話始めた。
実は番頭の竹蔵さんを前からお慕いもうしてまして。でも私はお嬢様と違って器量も悪いし取り柄も無いし。連二郎さんに偶然気持ちがばれてしまってからはよく相談にのってもらって。お陰で竹蔵さんとお付き合い出来る様にはなったんですがその…。お互い初めてでしたのであの日連二郎さんに二人で話しを聞きに。私は先に失礼しまして竹蔵さんはまだしばらく残ってました。男同士の話しだとかで。
妙は顔を赤らめながら紅に教えた。