午前九時―\r
卒業式は、体育館で厳かに始まった。卒業証書授与に、校長先生の話、校歌斉唱、仰げば尊し・・・。
お決まりの流れの中、私の頭の中は、相変わらず、淳との思い出と、三年間の色々な出来事が、交互に廻って来て、此処に心在らずのまま、時は過ぎ、卒業式は、終盤に差し掛かって居た。
「香里・・・。」
私の肩を隣に居た、麗華が叩いた。
「ん?何・・・?」
「さっきは、淳に未練なんて無い、なんて言ってたけどさぁ、ほんとは・・・、未だ好きなんでしょ?淳の事。」
麗華は、小声で囁く様に私に言った。
「もう・・・、未練なんて無いって言ったでしょ?さっき。」
「香里って解り易いんだからぁ・・・。何年、親友やってると思ってんのよ!淳に、ちゃんと話しなよ?ね?分かった?」
麗華は、何もかもお見通しと言わんばかりに、小声で私を諭した。
「あっちゃんには、彼女が出来たんでしょ?今更、私が何言っても・・・。」
「淳、彼女は、出来たけど、彼女のゴリ押しで、仕方無く付き合っただけなんだから・・・。本当は、香里の事、忘れられ無いんだよ?」
「でも・・・。親友で居てくるよ!って言ってたのに、今更だし・・・。」
「とにかく、ちゃんと話ししてみなよ。私も、茉莉子も、応援してるんだから!」
「・・・。」
麗華に、背中を押された様な気がした。
淳が遠くに行ってしまう気がすると、気が気で無かった。淳に、あの日の事を話せれば、話は早い・・・。迷いながら、淳と卒業式の後、とにかく、自分の気持ちをもう一度、話してみよう、そう思った。