卒業式は、一時間ちょっとで終わった。教室で、先生や友人と話をした後、花を持った後輩達が、廊下で私達を見送ってくれた。
荷物を片付け、麗華と茉莉子、そして淳と四人で、校門へ向かって、歩き出した。
先に歩いていた麗華が、突然立ち止まり、後ろを振り返って、こう言った。
「私達、ちょっと今から用事が有ってね・・・、先に帰るから、香里、淳と帰ってよね!」
茉莉子も、麗華の言葉に続けた。
「うん、そうそう。私達、ちょっと用が有るんだよね・・・。」
「マジかよ・・・?じゃあ、俺も帰るよ。」
淳は、私と目も合わさず、気不味そうに言った。
勇気を振り絞って、私は口を開いた。
「あっちゃん・・・。ちょっと時間貰え無いかな?少しで良いの・・・。」
淳は、戸惑いながら、空を見上げた。
「時間?良いけど・・・。」
「じゃあ・・・、私達、帰るね。春休みだし、また遊ぼうよ。連絡するね!」
麗華と茉莉子は、私に目配せをして、逃げる様に帰って行った。
淳と二人っきり―\r
沈黙の時間が流れた。
二人とも、気不味い空気に押し潰されそうになっていた。
校門の手前で、人の流れに逆らい、二人は佇んでいた。
「あっちゃん・・・。あの、私・・・。」
身体は、小刻みに震え、口も思う様に動かない。
「うん・・・。」
「彼女出来たって、ほんと?朝、麗華に聞いちゃったんだけど・・・。」
「あぁ・・・。バイト先に、客で来てた子なんだけどさ。一週間前に、突然、告白されちゃって。いつまでも、香里の事、引き擦ってても、辛いからさ。好きになれるかも、知んないし、付き合ってみようかなぁ〜って。」
「そっか・・・。私ね・・・。」
気不味い時間を作らない様にする為なのか、淳は、私の話を遮る様に続けた。
「香里も、幸せになれよ。俺も、お前の事諦めなきゃ〜って必死なんだからな!あんまり、しつこいと親友としても、居られないじゃん?」
私が、あの話を出来そうな空気は流れていなかった。この時に、話せていれば、この先の人生は変えられた―かも知れなかった。