星の蒼さは 131

金太郎  2008-10-15投稿
閲覧数[563] 良い投票[0] 悪い投票[0]

空気の抜ける音と共に、WW【蟒丸(ウワバミマル)】の背部からコクピットが迫り出し、中から人の影が姿を現した。

長身の男だった。

二十代後半から三十代前半といったところか。

パイロットスーツは着ておらず、月軍の軍服に身を包み、こちらを見下ろしている。

「ブラウンの髪に蒼い瞳の娘…」

口元に笑みを浮かべると、男は十メートル程の機体から飛び降りた。

「ん」

近くまで来て、足を止めた男はハルに目を移すとハルの顔をじろじろと見た。
次に後ろで震えているアキの顔を見つめると、首を傾げた。

「どっかで…?」

そう言われてハルはこの男の顔を思い出した。

数週間前、ニューヨークの裏通りでアキに暴行を加えていたアポロをハルが殴った時。

仲裁をした日系の男だ。

男もそれに気付いたようだった。

「あの時の!」

男はポンと手を叩いて笑った。

「どうりでそれなりのパンチを打てる訳だよ。そーか、お前京一の部下だったの」

「京一…狩野大尉?」

「そ。アイツ厳しいだろ。昔からだぞ。例えば…」

だが、男の話は一発の銃声で打ち切られた。

「吟次!二人から離れろ!!」

もはや原形を留めていないテーブルの上に立ち、狩野が拳銃を構えて男を威嚇していた。

「よお、こうして生(ナマ)で面ァ合わせるのは五年ぶりか?」

狩野に向けて大きく跳躍した男は狩野の顔面目がけて回し蹴りを見舞う。

「六年だ」

狩野は折れていない方の左手でこれを防ぎ、ほぼゼロ距離で拳銃の引き金を引く。

「細けェな」

弾丸は男の頬をかすめたが、男は全く怯まず狩野の顔面へ拳を振り上げた。

「お前が適当過ぎるんだ!!」

狩野は銃を撃ってこれを牽制、一瞬生じた隙を見逃さず男を蹴り飛ばした。

男は宙を舞っても、何事もなかったかのように着地したが、骨折が完治していない狩野は体重を支えきれずにテーブルから落ちた。

「様ァねーな京一。折れてんのか」

「どこぞの馬鹿があんまり無法な真似をしたもんだからな」

「あん時にやっちまったのか。悪かったな」

この間に、男は傍らに落ちていたコーラ瓶を叩き割って武器とし、狩野も拳銃の弾を装填し直した。

睨み合いがしばらく続き、二人の呼吸が一瞬止まったその刹那。

どちらからともなく、ほぼ同時に間合いを詰めた。

その時。

ピピ、ピピと機械音が部屋に響いた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 金太郎 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ