夏子の向かった場所は喫茶店「エレガント」だった。
喫茶店のすぐ隣先には商店街で賑ている。まだ、その先をいけば夏子の行き付けのスーパーマーケットがある。
買い物帰りや寄り道に茶を一杯飲んで寄る客も少なくない。
静かで落ち着いた雰囲気で夏子好みの喫茶店だった。
扉をあけ中にはいった。
「いらっしゃ…―あれ?夏子さん。平日に寄るなんて珍しいね」
出迎えてくれたのはこの店のオーナーの久野智明である。年齢は20代後半くらいだろう。
この店が出来たのは二年前
店がたった時は物珍しさもあって偶々入ってみただけだった。
その頃の智明はまだまだ初々しさがのこる爽やかな好青年だった。
夏子には結婚や出産の経験はない、だから我が子だとか孫だとかそういうものに対する感情がよく分からないが初めて会ったこの日から夏子は智明という青年に次第に惹かれるようになったのだった。