リグラが宰相府に入ると、そこにはルークがにこにこしながら、紅茶を飲んでいた。
「ルーク…何を笑っておるのじゃ?」
リグラは怪訝そうな表情で、ルークを見た。
「もちろん、紅茶が美味しく飲める幸せを堪能しているからですよ」
ルークは相変わらずにこにこと笑いながら、カップを静かにコースターの上に置いた。
「グラムは今、暗黒剣に拘束されているそうですよ」「何っ!?」
リグラは目を見開いて驚いた。
「精霊剣側に問い合わせたところ、グラムは暗黒剣の領土にいた所を見つかり、散々暴れ回った挙げ句に取り抑えられたそうです。暗黒剣側から精霊剣にその旨を伝えられたそうですから、間違いないでしょう」
「と、いう事は…拘束した上で、奴と何らかの取引を行い、今回の事件を起こさせた…という可能性があるな…」
「そうですね」
ルークは短くそう言って、一つ小さく息を吐いた。
「これは厄介じゃな。どちらも奴らにとっては捨て駒にしかならんぞ…」
リグラは苦い顔をしながら、自分の椅子にゆっくりと腰掛けた。
「この二人を拘束したとしても、暗黒剣側はシラを切り通す事ができますからね」
ルークはカップの中で僅かに揺れ動く紅茶を見つめながら、言った。