夜に咲く華〜その22〜

岬 登夜  2008-10-16投稿
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傷の確認に着物を開くと辺りは紅く染まった。

「どうして…」

医者が駆け付けみんなを部屋の外にだし傷の手当をする。

連二郎の呻き声が襖越しに紅の耳に入る。

「誰がいったい…」

鶴と健吾の顔が浮かぶが連二郎が刺される理由がない。物取りか? いや、連二郎ほど強い男がこうも簡単に刺されるわけがない。

ともかく助かって欲しい、紅は願った。

かなりの時間医者は出てこなかった。襖が開いたとき紅は真っ先に医者に詰め寄った。

「傷は何とか縫い合わせたが、かなり血が出たんでな。後は本人の体力と気力、それと手厚い看病だな。また明日くる」

紅は連二郎の側に座る。血の気の無い青白い顔を苦痛に歪める。

「連二郎さん。わかる?紅がわかる?」

涙がぽたぽたと畳みの上に落ちていく。

紅は連二郎の手を取り両手でにぎりしめる。

その夜、紅は一人朝まで連二郎の看病をした。


朝も遅くなって紅は母屋に顔を出した。
連二郎に精のつくものを汁にして飲ませようとしていた。

母屋に近づくにつれ何だか騒がしい。

「何かあったの?」

帳場をのぞくと妙が頬を押さえ倒れ、一人の男が立っている。

「妙!健吾さ…ん?」

髪も髭も整え、仕立てあがった洋服を着た健吾がそこにいた。

「御主人のお帰りに何を驚いた顔をしているんだ?紅?」

あまりに堂々とした健吾の姿に紅は違和感を覚えた。

「妙を?叩いたの?どうして妙を…」

妙と健吾を見比べ妙に駆け寄ろうとする紅の腕を健吾は掴む。

「女中の分際で主に出ていけと言うものでね。罰を与えたまでさ。それよりも…」

健吾はまじまじと紅を見た

「僕が留守中、随分と艶やかになって。男でも作ったのかい?君がまさかあんなチンピラ上がりの男が趣味なんて。道理で私を毛嫌いするはずだ」

「!!」

紅は健吾の顔を見る。知っている?連二郎を?

「貴方なの?連二郎を刺したのは?」

紅は腕を掴まれながら健吾に抵抗するが、男の力にはかなわなかった。

「知らないよ。そんな名前の男。とにかく、僕はここの主なんだから逆らわない様にね。」

まだ男尊女卑の残る時代。家を出たとはいえ、籍の抜けていないかぎり健吾は紅華楼の主に違いなかった。



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