Angel's left leg

リゾート  2008-10-16投稿
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「上がれ! もう時間はない!!」
緑のフィールドを駆け回る選手に監督からの怒声が飛ぶ。
後半ロスタイム、僕ら家族が応援するチームは0-0のままだ。
この試合は両チームが一部リーグに残れるか残れないかの大事な試合だ。
僕ら家族の応援にも力が入る。

ピッピーー

主審のホイッスルに試合が止まる。
ペナルティ付近、ゴールから22Mでのフリーキック。
多分これがラストプレイだろう。
なのに、選手交代。
この大事な時にベンチは動いた。
電光掲示板には、“10 Out 21 In”と表示されている。
「10を交代!なにをやってるんだ!」
父さんが声を荒げる。
サポーターも一斉にブーイング。
だが、フィールドの中はいたって冷静だった。
監督の采配を信じ、交代を受け入れた。
プレイに集中する。
キッカーは交代で入った21。
適度にボールから距離をとり立つ。
主審がホイッスルを吹く。
リズミカルに助走を付け左足を振り抜く。
ボールは吸い込まれるようにゴール右隅に突き刺さった。
一時の沈黙がスタジアムを覆う。
主審のホイッスルでスタジアムが遅れてきた歓声に揺れる。
僕ら家族が応援するチームはこの大一番で勝利を勝ちとった。
試合後のインタビューで彼はこう答えた。
「僕は左足しか使えない。けど、僕は左足なら誰にも負ける気がしない。」
彼は鮮烈なデビューを果たした。
そして、僕の記憶にも強く焼きつく試合になった。



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