パラノイア亭

雛祭パペ彦  2006-06-12投稿
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 トリガラスープの旨そうな香りに誘われて、青年は、その店を初めて訪れた。
「てめぇ! 何しに来やがった」
 無愛想な店主は、もとよりケンカ腰だった。
「ラーメン、食いに来た」
 少し圧倒されながらも、青年は答える。
「うちは、ラメーン屋だ」
 と、店主。
「なにさ、ラメーンって?」
 と、青年。
「ラメーンは、ラメーンだ」
「じゃ、それ食わせろ」
 店主の対応にブチ切れた青年は、わざと乱暴な口調で言ってみせた。
「ラメーンは、食いものじゃない」
 負けじと、店主も乱暴に答える。
「じゃあ、ラメーンって何だ」
「うるさい黙れ!」
「客に向かって、黙れとは何だ!」
「何だとは、パンダの親類だ」
「あ、この人、狂ってる!」
 青年は、あ然とする。
「狂ってない」
「いや、狂ってる」
「狂ってないもん!」
「狂ってるもん!」
 なぜか子供のケンカじみてきたのがたまらなくなり、青年は慌てて店の外へと飛び出した。
「あ、食い逃げ!」
「え? さっき、ラメーンは食いものじゃないって言ってたのに」
 青年は、必死で弁解する。
「うるさい、食い逃げ野郎!」
 店主は、必要以上に大声で騒ぎたてる。
「おれは何も食ってないぞ」
「いや、食った」
「食ってない」
「食ってない」
「え?」
「確かに、貴様はラメーンを食ってない」
 この時はじめて、店主の表情が緩んだ。
「わかっていただけましたか」
「うむ。わかった」
 和解のムードが、両者の間に漂いはじめる。
「わかれば、よろしい」
 よせばいいのに、青年は偉そうに言ってみせた。
「何だと!」
 お約束のごとく、再び、店主はブチ切れた。



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