辺りをぐるーっと見まわした。右手にひろがるのは雑木林。最初に音を聞いたあの林だ。正面には田畑がどぉーんとひろがっている。左手には道幅のさほど広くない悪路がある。その道を300メートルほどじゃりじゃりと歩けば、その先は舗装されたアスファルトにかわって、そこからは人工的な光が道を照らしている。ただ、その道のまわりにも木々はもじゃもじゃと茂っているため、玄関の近くから見る分にはだいぶ遠くのアスファルトの外灯が頼りなく見えるぐらいだった。家の中から聞こえてくるみんなの笑い声は、居眠りのときだんだんと遠くなる音声のような感じがした。
ぼくはいつのまにか左の道のほうに歩いていた。音楽が聞こえる方向ははっきりとわからなかったのに、足はズンズンと左のほうに進んでいた。じゃりじゃりと音楽に合わせるように歩いていた。お化け屋敷にいるみたいにドキドキして、大好きなレストランに行くときみたいにドキドキして、ほかの人にも聞こえちゃいそうなぐらいドキドキバクバクして、頭の中は真っ白だった。