その絵はまだ未完成で、なにを描いているのかはわからなった。ただ赤い絵の具で一杯に染められている、それだけがはっきりとわかった。
「おぉ・・・うめえ。」 絵のことにはにぶいウィルは、取りあえず、その言葉を口にした。
「やめてくれよ。まだ下描きで、うまく描けるかはこれからだよ。」
ジュードは少しすねた顔をした。
「ごめん。」
「いや、いいんだけど。どうも誉められるのは苦手で。だってさ、うまいなんて思わなかったろ?俺から見たって、なんだこりゃ、な絵だよ。下描きだし、当然なんだけど。だいたいな、素人は絵のことわかんなくて当然なんだよ。それを、無理に誉めようとしてさ。思ってもないことに誉められる身にもなってみろってんだって感じなんだよ!」ジュードは手を大きく動かしながら、力説を止めない。話が長いのはさっきの母親らしき女とよく似ている。
「なんだこりゃ、な絵ならなんだこりゃ、って言ってくれればいいんだよ!正直に言ってくれたほうがどんなに楽か!素直な感想かどうかなんて、わかるもんなんだからさ!」
そう言って力説は終了した。
「そう、だな。うん。」
ウィルはもう、どう対処していいかわからない。