夜の街は、静かである。あの火事の事件以来、街の人は怖がって、夜はほとんど人はいない。
街灯や、家々の窓から漏れる明かりがぼんやりと、ウィルの足元を照らす。
ハリソン警部はどうしてるだろう。
メレディスは元気かな。
火事で亡くなった人たちの遺族は当然、警察を、俺たちを、俺を、恨んでいるんだろうか。
俺は、なにやってんだろう。不審者殺して、仕事止められて、画家の長話し聞いて。なにやってんだろうな。
母さん。
俺は、あの事件の犯人をつきとめたくて警察になったのに。
的外れだったかな。
関係ないことばっかり起こって、なんか疲れたよ。
街灯の下にあるベンチに誰かが座っていた。
(誰だろう。こんな時間に。)
近づくと見えてくるその人物。肌が白く、鼻がすっと通っているきれいな女性だった。
「どうしました?こんな時間に。」
女は座った姿勢のまま、動かない。
「ごめんなさい。今は、動けないんです。」
そう。
「怪我でもしてるんですか?病院に行きます?」
「ダメです。今私に触れたら、倒れてしまいます。」「は?」
「お腹が減って、死にそうなんです。」
フィオナだ。