幸せになれよ―\r
突き放す様な言葉にすら、聞こえた。
自分から、別れを切り出したのだから、当然、仕方無い言葉の筈なのに、何故か、悲しかった。
「香里の話って?」
「ううん・・・、別に。彼女が出来たって、朝、麗華から聞いたから、私も、あっちゃんに幸せになって欲しいって、伝えたかっただけ・・・。」
やっぱり、話す事は出来なかった。私が、汚れている事を淳が知るのが怖くなったのも有った。それに、この空気で、何を話すのだろう・・・。
愛している人には、幸せになって欲しい―\r
綺麗事だけど、悲しんだり、怒ったり・・・。そんな、淳は見たく無かった。私が、堪える事で、淳は、そんな気持ちにならずに済む―\r
私は、この時そう思った。
無理に、気持ちを抑えたせいか、涙が溢れ落ちた。
「何で、泣いてんだよ?香里、変だよ、お前・・・。」
「変って?何でも無いって。」
「香里が、別れよ。って言った辺りから、お前暫く変だったけど、何か、俺に隠してる事有んのか?」
淳は、私の変化に気が付いていた―\r
今、初めて聞いた。
気付いて無いと勝手に思っていた。
「隠してる事なんて、何にも・・・、無いよ。」
「俺が肩を触っただけで、凄い顔したり、或る日を境に、明らか、俺の事、避けてたじゃんか。今も・・・、お前から別れよって言ったのに泣いちゃうしさ・・・。」
「それは・・・。」
淳の幸せ―\r
それを願うのが、私の、今、しなければいけない事・・・。自分の中の二人の人格と闘っていた。
一人は、楽になりたいのなら、全部話しちゃいなよ!と言う自分―\r
もう一人は、言っちゃ駄目!愛してる人に辛い思いをお裾分けしちゃいけない!って言う自分―\r
一旦は、あの日の事を話せる空気じゃ無い・・・。と思いながら、迷っている―\r
一貫性が無い自分を責めながらも、心は、揺らいでいた。