猫のラブレター4〜旅〜

hiro  2008-10-17投稿
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いつの間にか、ヒト君の家の前にいた。
やっぱり、いない…。
もう会えない気がした。
もう、会わない方がいいのかもしれない、とも思えた。
所詮は猫と人間なんだ。恋なんて…。
わたしは落ちていた空き缶を蹴ってから
「人間に恋するなんてありえなーい!」
と大きな声で叫んでしまった。ありえないんだ。
そこで、あの日のことが頭に浮かんだ。
手紙を渡した日。
ヒト君がわたしの手紙を受け取ってくれて、
すごく喜んでくれて、
頭を撫でてくれて…。
あの日の、ほんの数分の思い出だけで、頭が破裂してしまいそうだ。
蹴飛ばした空き缶を見て、こうも思った。
あの日の思い出が全部消えたら、わたしの頭は、あの空き缶のように空っぽになるに違いない…。

照れくさそうに、太陽が沈んでいく。
わたしの心も沈みそうだ。いや、もう沈んでいるのかも。
空を見上げると、電柱のてっぺんにカラスが立っているのが見えた。
その、勇敢な姿に見とれていると、
やがて、カラスは飛んでいった。

もしもわたしが
この空を
自由に飛べたとしても
空は飛ばないよ
臆病だからじゃない
君をさがしてしまうから

上を向いて歩いていると、電柱にぶつかった。
テレビが目に入る。またここか、同じ所ばかり歩いてる気がする。
〈今入ったニュースです。亡くなったTAKAさんのカバンから、宝くじが見つかりました。しかも、100万円が当たっているのです!これはTAKAさんの母に贈られるそうです。宝くじの裏には、ハートのマークが描かれていたそうです。〉
わたしは気にせず歩き出す。
友達をさがす旅にでも出ようかな。
果てしない旅の始まりだ!
そしてヒト君、さようなら。
―終わり―



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