彼は真面目だった
何だって簡単にこなして
誰にも思い付かないような考えを思い描いたりした
唯一…話すのが苦手だったから、きっと損ばかりしていた
何だってできるのに
つまらない人じゃないかって彼をよく知らない人からは思われていたから
私はそんな彼が好きだった
いつもの沈黙も
流れるゆるい空気も
まとわりつくような雰囲気も
ただ、彼には好きなことがあった
毎日、絵を描くこと
赤とか青とかそういうのではなく
金とか銀でもなく
そっと目を閉じて
瞬間イメージしたものを
描くだけ
彼は私にそう教えてくれた時があった
私は彼が絵を描く姿が好きだったから
ずっとそばにいたいと思ったのかもしれない
簡単なことを、嘘の言葉で塗り固めてしまうよりは
素直に描く方がいいと