金属バットが、勇二の顔面スレスレをかすめた。
シュッという音と共に、前髪がフワッと靡いた。
勇二が肩をすくめて硬直するのを見て、榊原と前田がゲラゲラと笑った。 その後ろで清田が顔を背けるようにして震えている。
「あぶねー!もう少しでホームランだぜ!でもこれでツーストライクー!」
「榊原君、前田君、いくらなんでもやりすぎだよ…万が一当たったら死んじゃうよ!」
「うるせぇぞ清田!パシリが口出すなよ!」
榊原が清田の鼻先にバットを突き付けた。
「勇二くーん、転校初日から悪いけど、この遊び辞めてほしかったら君もパシリになってよ。」
勇二は、ニヤニヤと笑いながら顔を覗き込んでくる前田からわざとらしく視線を外した。
「いやぁ…パシリなんて無理だなぁ。忙しいし。」
前田は、勇二の顔をニ、三秒見つめた後、目線をそのままに顔だけを上げた。
「じゃあ明日もここ集合な。明日はゴルフにしよーぜ。」
「いいね!次はサッカーな!」
そう言うと二人は清田と笑い声を残し、去って行った。
「何で拒否したの?言うこと聞けば何もされないのに!」
清田が勇二に駆け寄った。
「いやぁ。明日にはあの二人も大人しくなるよ。楽しそうな学校でよかった。」