「私はこれくらいなんともありません。それより紅お嬢さん、お嬢さんこそ…。せっかく連二郎さんと…」
紅は辺りを見回した。健吾の姿は無い。
「け…旦那様はお出かけになりました。夜には帰るそうです。お嬢さん、連二郎さんに今のうち会ってらしたほうが…」
妙の言葉に紅は頷く。
幸い医者も健吾のいないうちに往診に来てくれ紅は安堵した。が、依然連二郎の意識は戻らず危険な状態にかわりなかった。
「紅ちゃん、面倒は私が看ておくから。もう行きな、あいつが帰って来たら大変だよ」
紅はあやめに促され後ろ髪を引かれる思いで離れを後にした。
しばらくして健吾はとても上機嫌で帰って来た。
「紅、大丈夫だったかい?心配だったんだが大事な用事があってね」
健吾はお土産だといって大きな包みを渡す。
「開けてごらん」
中から深紅の着物があらわれた。
「これは…」
「君に似合うと思ってね。着てみてよ」
紅は言われるまま部屋に行き、着替えを始めた。
「着物を脱いだ姿ってそそるね」
振り返ると健吾が襖を開け紅の着替えを見ていた。
「いつからそこに…?」
気配すら感じなかった紅は平静を保つのがやっとだ。
「まぁ、そんな事はいいじゃないか。僕達は夫婦なんだし、別に…」
健吾は襖を閉め一歩一歩ゆっくり紅に近付く。まるで獲物を仕留めようとする肉食獣の様に。
白い襦袢姿の紅を健吾は抱きしめた。
襦袢の上から紅の身体をゆっくり触っていく。まるで蛇に巻き付かれている感じがして思わず紅は健吾を振り払う。
「止めて。私に触らないで」
紅はその場でしゃがみ込みカタカタと震えた。初めて健吾に襲われたあの日が蘇る。
しかし、健吾は紅の態度にお構いなしに紅のうなじにそっと触れる。
「つれないなぁ。そんなに僕が嫌いなんだ。
しゃがみ込み紅に健吾は覆いかぶさる。
健吾の手が容赦なく襦袢の中の乳房を触る。
「やめ、止めて。嫌」
紅の言葉は健吾の興奮をさらにあおったのかますます激しさが増す。
「おとなしく僕の言うこと聞いたほうがいいよ。離れに誰が居ることくらい判っているんだ。連二郎…君だっけ?かなりの男前だね。今彼を追い出したら死んでしまうかもね」