もっと鈍感であったら良かった
そしたら気付かなくて良いものがあった
こんなにも傷付かなくても良かった
夜遅くに掛かる貴方からの電話
その回数を重ねて行くうちに嫌な予感が過ぎる
奥さんが家にいない
かと言って家庭内の問題がある風でもない
だったら残りは一つ
こんな時の勘は良く当たる
『お子さんでも産まれましたか』
少し間が空いての返答
『良く分かったね』
付かれ続けていた嘘
出会ったあの日
私は貴方に聞いた
『お子さんはいないんですか?』
『いないよ』
貴方の即答を信じた
あの時はすでに妊娠中だったと言う
言うタイミングがなかったと言い訳をする
本当に好きだったからなかなか言えなかったと必死で弁解する
情けない
私も貴方も
気付き始ながらも貴方の『何でもないよ』を信じて来た
嘘を感じながらも嘘を信じた
表面上では気付かない振りをして心の中で信頼を失い始めていた
都合の良い女
暇潰し
何かを満たすだけの道具
そんな言葉が頭を埋めた
恨みや憎しみと言うよりも飽きれてしまう
初めから告げていてくれれば始まりは来なかった
もうすぐ貴方に会える
迷いはあった
真実を知り冷たくあしらいながらもまた貴方に従った
『会いましょう』
どうせなら会って手放せないと思える程に好きにならせてみようか
今の貴方に必要不可欠な存在になってみようか
再会の不安の裏に隠れた自分の思いが姿を現し始める
私を深く傷付けたのだからその位はさせてもらおう