1859年、オーストリアの貴族、クーデンホーフ・カレルギー家に一人の男の子が生まれた。その子は、名をハインリッヒ・クーデンホーフ・カレルギーと言った。
1874年、東京の骨董屋、青山家に、一人の女の子が生まれた。その子は、名を青山みつと言った。
この二つの魂は、違う時に違う場所で生まれながら、出逢い、惹かれ合い、求め合い、そうして一つとなり、激動のヨーロッパを生き抜いた。
二つの魂が天に召された後も、時代は時に激しく、または、時に優しく、人々を取り巻き、時の流れは止まることなく流れて行っている。あたかも二つの魂が出逢い、一つになったことなど、小さな、小さな出来事のごとく、今も刻々と。ただひたすら...。
ー2007年11月末ー
関沢モネは途方に暮れていた。彼女は看護師で今までは寮生活だったのだが、あることで、寮を出てマンション住まいをしようとしていた。少なくとも今日までは...。それが何と、斡旋した不動産業者が詐欺行為を働き、行方をくらましたのである。
つまり、紹介された物件は、他の業者が取り扱っている物件であり、すでに他の人が入居する予定であったにも関わらず、不動産業者は、
「良い物件がある」
とモネに持ちかけたのである。そのマンションは新築で日当たりも良好。その上に勤務先からも近く、周りなは銀行、郵便局、それに遅くまで開いているスーパーもありながら、七万という格安の物件であったため、モネは一も二もなく飛びついた。
それが引っ越しの前日、マンションの掃除に訪れて、他の人が住んでいたことにビックリしたモネが、ここは自分が契約したマンションだと言ったが、相手も
「そんなことはない」
と、契約した不動産業者に電話したり、モネも自分が契約した不動産業者に電話したりとてんやわんやの大騒ぎ。
結局、すでに住んでいる人達の言っていることの方が正しく、自分が詐欺に合ったと分かったのは、電話をしても繋がらないので、大急ぎで訪れた不動産業者の事務所でである。事務所の前には大勢の人がいて、事務所に向かって、
「この野郎、出て来い」
「金、返せ」
「警察に訴えるぞ」
「中にいるんだろが」
などの罵声を浴びせかけている。
モネは何とも言えない気分の中、側にいた男の人に
「どうしたねですか? 何かあったのですか?」
と訊いてみた。