夜に咲く華〜その25〜

岬 登夜  2008-10-19投稿
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紅の顔はひきつる。

この男は全て判っていたんだ。判って騙されたふりをして心の中で笑っていたのだ。

「もう、この身体に彼は触れたのかい?」

健吾の手が乱れた襦袢の胸元に入り込む。

冷たい健吾の手は襦袢の胸元を大きく広げ紅の形の良い二つの乳房が剥き出しになる。

「そういえば今日、おもしろい話を耳にしたよ。なんでもどぶ板の女郎が血まみれの包丁持っているのが見つかったらしい。その女郎ってのが鶴…お義母さんだって」

紅にはその血が誰のものか察しがついた。

「どうした?寒いのかい?震えてる」

男の力には敵わず、紅は健吾に押し倒された。

もう駄目だ。紅の目からは涙が静かに溢れた。


「あの…」

襖の向こうから番頭の竹蔵の声がした。

「あの、旦那様にお客が来ているんですが…」

健吾の動きが止まる。

「客だと?」

「はい。大河内様と。そういえば判ると…」

大河内と言う紅が聞いたことの無い名字に健吾は慌てた。

「すぐ行くと伝えてくれ」

健吾は名残惜しそうに紅の身体をみて身支度を整えた。

「大事な友人なんだ。残念だか今夜は帰れないかもしれない。まぁ、楽しみは後になるほど大きくなるからな」

そう言って紅を部屋に残し出ていった。

紅は大きくため息を吐いた。とりあえず今夜は無事な様だ。ほっとしたとたん身体がまた震え出す 


健吾が行ってから何時間たったのだろう。気が付くと空が明るくなりはじめている。

紅は無性に連二郎に会いたくなって離れに急いだ。

紅の下駄の音で目を覚ましたのかあやめが襖を開ける。

「紅ちゃん。あいつは?」

「昨日夜に出掛けてまだ帰らない。連二郎は?」

紅の問いにあやめは首を横に振った。

「まだ、意識が戻らなくて…」


紅は連二郎の手を握る。

「ねぇ、私を助けてよ。連二郎!」

紅の声に反応したかの様にピクリと瞼が動いた。

「連二郎…?」

ゆっくりと連二郎の瞼が開く。

「ここは…。俺…?」

紅は刺されてここまで来たことを説明した。

「あぁ、そうだ。女に刺されて…。その後…男に前から…。油断しちまったな」

男に前から?健吾に違いないと紅は思った。

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