フィオナは申し訳なさそうな表情をして精一杯の償いをするのだった。
傘をかぶった月の下。二人は街灯の下のベンチに座り、パンを食べた。
「帰っていいんですよ。パンまで買っていただいて、話し相手までしていただいて・・・なんか申し訳ないです。」
フィオナはパンを大きな一口でどんどん食べていく。「別に気にしなくてもいいよ。家に帰っても嫌なことしか思い出さないし。」
ウィルは空を見ながら言った。
「嫌なこと・・・ですか。」
フィオナはふと、あの両親を亡くした二人の子供を思い出した。
「私は昨日、両親を亡くしたある子供達の家に泊めさせてもらったんですが・・・。」
ウィルの肩がぴくりと動いた。
「火事、あったんですってね。だいたいのことは、その子供から聞きました。本当に、残念です。」
フィオナは慰めに、その言葉を口にしたつもりだったが、ウィルにとっては自分への戒めにしか聞こえない。
「まったく、ふがいないよ・・・」
ウィルは虫のようにつぶやいた。
「・・・ふがいない?」
予想外の言葉にフィオナはとまどった。なにか触れてはいけないことだったかもしれない、やめておこう。そう、察したのだった。