夜に咲く華〜その26〜

岬 登夜  2008-10-20投稿
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昼近くになり健吾は帰って来た。

かなり疲れたのか帰るなり眠ってしまった。

紅はその隙にとある場所に出向いた。



健吾は夕方まで眠っていた。その頃には紅も戻っており普段通り過ごしていた。

「お話があるの」

紅の言葉に健吾は余裕の顔で「なんだい?」と答えた。

「私と離縁してください」

一枚の紙を取り出して申し出た紅を健吾は笑う。

「いいよ。僕と別れて連二郎君と一緒になるつもりかい?ただしここは渡さないよ。身一つで出ていくんだ。無一文であんな怪我人つれて、行き着く先はどぶ板通り。義理の母と同じ道を辿る気があるならね」

健吾は勝ち誇った顔で紅を見る。紅の出した紙に署名しひらひらと紅の前に落とす。

「それでもいいわ。貴方とは生きていけ無い。離縁してください」

署名入りの紙をすかさず拾い紅は答えた。健吾の顔は少し引き攣った。

「あの男がいけないんだね。あの男にお前騙されているよ」

健吾は離れに向かった。手には懐から出した短銃が握られている。

「やめ…、連二郎を打たないで!」

紅の叫びを背に健吾は離れへと急いだ。

離れは薄暗く、火鉢の明かりが健吾の顔を照らす。健吾はためらいもなく布団に向かって数発弾を撃ち込んだ。

「これで離縁なんて言わないだろう?紅?」

てっきり後から紅が来ていると思ったが紅はいなかった。

そういえば、あやめが面倒見ているはず、そのあやめの姿もない。おかしい。

健吾は布団をめくって見た。枕が人型に並べられている。

「やられた」

健吾はすぐに母屋に戻るがそこには紅処か遊女、使用人のはてまでもぬけの殻。

急いで店の外に出るが仲見世が始まり人がごった返していた。

「おや?今晩は紅華楼の明かりがないねぇ。どうしたんだろう?」

常連客らしい男が真っ暗な紅華楼を見て呟く。


やられた。紅に…。

健吾は店の前でがっくり膝を地面に着く

でもいいさ。この店さえあれば何とでもなる。女だって金だって。


気がつくと何人もの男に取り囲まれていた。

「すいません。紅華楼はしばらく休みに…」

常連客かと思い顔をあげると柄の悪い連中だった。

「な…、何の用です?うちの店に何か?」

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