第八話、背後霊温泉へ行く其の1
十月のある日、京助と影香は無鹿(なしじか)にある温泉旅館の『鳳凰』に来ていた。
「鳳凰、鳳凰、終点です。お忘れ物の無いようお下りください」
車掌のアナウンスが駅構内に響く。
実は、旅館の敷地内に駅があり、そのまま駅から旅館に入れるのだ。
「旅館の敷地に駅があると聞いてたけど、まさか旅館と駅が繋がっていたとは」
「驚きね、神明様達もよくやるわ」
京助と影香は只驚くだけだった。
この温泉旅館鳳凰は、亡霊退治に来た神明等が放置されていた建物を見て回っていた時に、偶然温泉が沸きだした為、温泉旅館として再建し、更に廃線になった国鉄無鹿線を使い、旅館への直通列車まで作ってしまったのだ。
当初は、上手くいかないと思われたが、良質の温泉と美味い料理、美しい自然に列車一本で行けるのと、入浴だけの日帰りが可能というのが受けた様で、今では無鹿の新たな観光名所になっていた。
「長い解説有難う、麻以さん。京助、行こう!」「え、影香引っ張るなよ!」
京助は影香に右腕を引っ張られながら鳳凰に入っていった。
そして、事件が起きた。「麻以さん、嫌なナレーション止めて」
九話に続く。