「ごめんくださーい」
タクトの声が玄関の前で響き渡る。
「何かあった?」
後ろからパールとウェドも入ってきた。
「いや、何も」
少し奥に入ってみると右手と左手には長い廊下が続いていた。その廊下は窓ばかりの壁と扉が一定の間隔毎に並んだ壁があった。そして、前には階段があった。
「階段を上ろう」
階段を上り切っても、先ほどと殆ど同じ光景だった。左右には長い廊下、階段の上には階段。
「ねぇ、右に曲がってみましょう」
パールが右に曲がったので曲がってみる。
「見て、職員室があったわ!」
「しょくいんしつって?」
「職員っていうくらいだから仕事してるんじゃない?」
「入ってみようぜ」
「ちょっと、仕事してるかも知れないわよ」
そんなパールの言葉も聞かずウェドは扉を開けてしまった。
「ガラガラガラ・・・」
扉を開けた瞬間、赤や青のローブを着た数人の大人たちと目が合った。しばらく、気まずい雰囲気が流れたかと思うと、その職員室のいちばん奥にある、いちばん大きな椅子に座っていた人が近づいてきた。
「校長」
「大丈夫、大丈夫、何も心配は要らん」
その人はとても若く二十代の青年にも見えるが、七十代の老父にも見える。 「いやーごめんなさいね。驚いたでしょう?」
あれ?女性かな?
「見たところ『リコード』の住人じゃなさそうだな」
えっ?あれ?
「何かようかい?」
「あっ、あのー、ぼくたちは旅をしているんですが、聞きたいことがあって」
なぜかとても緊張する。
「そうかい、そうかい、よく分からんが、とにかく場所を変えましょうか。着いて来い!」
結局、男性なのか女性なのか、若いのか年老いているのかも分からなかった。
「校長室?」
「ああ、俺の部屋さ、まぁ、この学校の中で最も偉い立場に立つ者の部屋じゃ」
こんないい加減な話し方だ、こっちから来ていてなんだが、もちろん信じられない。
「とにかく、適当に座ってくれたまえ」
校長室の中は廊下と違い地面はフカフカの絨毯が敷いてあり、適当に座れと言われた椅子も体全体を包み込まれそうな程の大きさだった。
「校長!」
男性が入ってきた。 「なんだよ!あの本当に大丈夫で・・・」
「大丈夫じゃ。下がっていてちょうだい」
男性は静かに帰って行った。