真紀はよくモテた。恋愛体質の女ってきっと真紀みたいなのをゆうんだろな…。
それからユウキとはいろんな話をした。関西弁でやり取りして親近感わいて夜中なのにテンション上がりすぎ。
『真紀ちゃんと話せてほんま楽しかったわ。ありがとう』
どれくらいユウキとやり取りしたんだろう、時計を見ると午前4時をまわってた。
『私こそ楽しかったです。ありがとう』
もう、これっきりかと思うと物凄く寂しくなった。胸がギュッと痛かった。
『これっきりは寂しすぎるから、よかったらまた話してください。』
…嬉しかった。自分の気持ち代弁してくれたみたいで、すごーく嬉しかった。
『私もおなじです。』
ユウキは自分のアドレスを教えてくれた。私は近くにあった本の表紙にユウキと書いてアドレスを写した。
『俺は今からまた仕事に取りかかります、またな!真紀ちゃん。』
『頑張って下さい。おやすみなさい。』
会った事もないのに、すっごく前から知ってたみたいな気がした。チャットやってる人って皆こんな感じなのかな。
外はもうすぐ夜が明けそうで、限りなく静寂で、何だか急に一人きりになったみたいな気がして泣きそうになる。
ベッドにある本を手に取る。ユウキの文字が今の私に(1人じゃないよ。)と語りかけてくれていた。
朝から忙しい。徹夜明けの厳しさは体に容赦ない。私の仕事は料理を作る仕事をしてる。地元にある古くから続く日本料理屋。
お昼のランチがようやく終わり、やっと一息つく。後輩で弟みたいな存在の健太が『今日は目が真っ赤ですよ!オバチャンなんやから早寝早起きして下さいよォ』…コイツは本当に一言多い。
『あんた人に嫌みゆう時だけ頭の回転抜群に早いんやから、仕事の回転も同様早くなってよヨロシク!』
嫌みは倍にして返す。ああ、こうゆうのも自分のオバチャン具合を浮き彫りにする。
あっ!そうだユウキにメールを送ろう、そう思って携帯のアドレスを見る…アドレス入れてない事に気付く。
へこみそうになった。いつもそう、肝心な事がスカッと抜けている。
その日は夜も忙しくて家に帰ったのは夜の10時をまわっていた。
ヘトヘトになって部屋に戻るとユウキのアドレスを見る間もないまま倒れるように寝てしまった。
『お姉ちゃん!お姉ちゃん!』母の声で目が覚めると、ベッドの横に仁王立ちする母がいた。